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巨額国債の償還対策 増税論が目白押し |
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新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府が打ち出したかつてない超大型対策を巡り、財源をまかなう巨額の国債を将来どう償還するかが課題となっている。財務省は今のところ当面の増税を否定しているが、専門家の間では消費税から富裕層への課税まで増税論が浮上し始めている。
2020年度の新規国債発行額は、当初予算32.6兆円▽1次補正25.7兆円▽2次補正31.9兆円で総額90.2兆円と、リーマン・ショック後の09年度(52兆円)を大幅に上回って過去最高を更新。公債残高は20年度末で累計約964兆円まで膨らむ見通しだ。
危機対応で緩んだ財政規律を取り戻していく観点から増税の選択肢も考えられるが、麻生太郎財務相は「増税に頼らず景気回復で税収増を目指す」との立場だ。省内も「当面コロナ不況が続く。増税は口にしづらい」(幹部)との空気が漂う。
ただ、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」のある委員は「消費税1%で2.5兆円の税収を確保できる」と消費増税の必要性を強調。「それが無理なら高所得者限定で所得税引き上げを選択肢にすべきだ」と訴える。
他にも、財政学や経済学の有識者らの間では、社会を持続的にしていくための環境税▽ビッグデータを活用し超過利潤を挙げているGAFAなど国際企業へのデジタル課税▽各国中銀の緩和マネーで投機的な利益を上げている富裕層への資産課税――などが取り沙汰されている。
とりわけ富裕層への課税については、6月2日の参院財政金融委員会でも「コロナ禍で格差が拡大している。日本でも視野に入れるべきだ」(共産党の大門実紀史氏)との指摘があった。麻生財務相は「確かに一つの考え方だ」と応じつつ、「富裕層へは所得税とか資産税とか、累次の税制改正をしてきた。その効果など状況を見極めながら検討する必要がある」と慎重な答弁に終始した。
金融資産への行きすぎた課税は、富裕層の海外移住や投資資金の海外流出(キャピタルフライト)を招く恐れがあるからだ。東京市場をニューヨークやロンドンと並ぶ「国際金融センター」にすることを成長戦略の一つに掲げる政府にとっては逆効果となりかねない。
日銀の大規模な金融緩和で長期金利は低水準で安定しているものの、積み上がるばかりの巨額の国債はやがて国家そのものへの信用失墜につながる。どうやって償還の道筋を付け、将来世代の負担を抑えるか。政府は国民への説明から逃げてはならない。
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