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中国が固定資産税を試験導入  ハードルは社会主義の建前と矛盾?
  中国が、土地や建物に課す固定資産税を一部都市で試験導入することを検討している。財政難にあえぐ地方の税収を増やすとともに、投機マネーが流れ込んで高騰しているマンション価格を抑え込むことが狙いだ。ただし中国では土地の私有は認められておらず、個人や企業は「使用権」を持つに過ぎないため、所有者でもないのに多大な税負担を求められる富裕層などからは強い反発が予想される。
 このほど中国財政省などが示した方針では、経済特区として発展著しい深センや、自由貿易港として開発が進む海南省など一部の都市を対象に、土地と建物について「所有税」を課すというもの。過去に上海などで建物のみに税を課したことはあるが、土地を含めた新税は初めての試みだ。これまでも議論の対象には挙がってきたものの具体化はしていなかったが、今年3月にまとめた5カ年計画に「立法化を推進する」と明記した。
 背景には、新型コロナウイルス対応の金融緩和であふれた投機マネーの不動産市場への流入がある。投機目的での不動産取得が増えた結果、上海など人気エリアの中古マンションの価格は、1年で1割を超える伸びを示しているという。新税の導入によって物件の収益性を下げることで、投機を抑える狙いがある。
 もっとも固定資産税の導入には、不動産オーナーから強い反発が予想される。というのも、中国の土地には社会主義国家ならではの特性があるからだ。
 固定資産税は日本をはじめ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど多くの主要国にはあるものの、中国ではこれまで導入されてこなかった。その理由は、社会主義国家である中国では、土地は前提として国有あるいは労働者集団といった集団所有の二種類しかないからだ。そのうえで個人や企業は開発権や使用権といった期限付きの権利のみを取得して、実際に利用しているというのが建前となっている。
 そのため固定資産税を導入すると、「土地オーナーではないが所有に伴う税を負担する」こととなり、建前との矛盾が生じかねない。さらに固定資産税の負担が多くなるのは複数の不動産を持つ富裕層であるため、そうした層からの反発を呼ぶことにもつながる。中国政府は2025年までに全国導入したい考えだが、実現までのハードルは低くなさそうだ。