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中古マンション転売の消費税で争い  納税者側が高裁で逆転敗訴
  中古マンション売買時の消費税の税務処理を巡る裁判で、東京高裁(岩井伸晃裁判長)は7月29日、納税者の訴えを全面的に受け入れた地裁判決を取り消し、国税当局側の言い分を認める判決を言い渡した。中古マンションを取得したのは転売のみが目的であるとの原告の主張を認めず、家賃を受け取っていたことを理由に控除を認めない国税の決定を適法だとした。中古賃貸住宅の取得にかかる消費税の税額控除にいては不動産会社のムゲンエステートも今年4月に高裁で国に敗訴しており、納税者側の2連敗となる。裁判で争われた税務処理は2020年度税制改正で規制が行われており、同様の問題は今後起きないものの、過去の課税処分について波紋を広げる可能性がある。
 原告の不動産会社エー・ディー・ワークスは、中古マンションを買い上げて大規模修繕などを施し、投資家に転売する事業を営む過程で、マンション購入時に発生した消費税を全額、仕入税額控除の対象として申告していた。原告会社によれば「過去数回にわたる消費税も含めた税務調査において、何ら指摘や議論の対象としてとりあげられた事実はなかった」という。
 同社は数ある消費税の算定方法のうち、「個別対応方式」を採用していた。同方式では課税仕入れを(1)課税取引のためのみ要するもの、(2)非課税取引のためにのみ要するもの、(3)課税取引と非課税取引に共通して要するもの――の3種類に区分し、(1)にかかる課税仕入については、仕入れの際に支払った消費税の全額を仕入税額控除として差し引くことができる。なお(2)だと税額控除できる額はゼロ、(3)については課税売上割合を乗じた額のみとなる。原告会社は以前から、仕入れた中古マンションをすべて(1)に該当するものとして税務申告を行い、当局から指摘を受けたこともなかったという。
 しかし東京国税局は18年7月、購入から転売に至るまでの間にマンション住人から家賃を受け取っていたことを理由に、「非課税売上となる家賃収入も事業目的の一つだった」として、全額の仕入税額控除を認める(1)に当たらず、(3)に該当すると判断。約5億3千万円の追徴課税を決定し、処分を不服とした会社が裁判所に訴えていた。
 昨年9月に下された地裁判決では、「仕入れの目的が不動産の売却にあることは明らか。賃料収入は不可避的に生じる副産物」と認定し、国税局の決定を「相当性を欠く」と結論付けた。しかし今回の高裁判決では、国税当局側の主張を認め、課税処分は適法だったと結論付けた。判決を受けて原告の親会社ADワークスグループは、ホームページ上で「判決の内容を精査した上で今後の対応を検討」するとコメントした。
 なお、今回の裁判で争われた部分については、20年度税制改正で見直しが行われている。昨年10月以降は、居住用建物に仕入れにかかった消費税は全額が税額控除の対象とならないため、今後争いになることはないが、判決が確定すれば過去の同様の課税処分についても影響を免れないだけに、業界内外の注目が集まっていた。
 ムゲンエステートの裁判では、加算税部分の処分取り消しを命じた判決に対し、勝訴した国が上告をしている。