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なりふり構わぬ大企業の中小化  中小税制の見直しは必至
   航空会社のスカイマークは9月28日に予定する計40億円の資金調達に伴い、同日に資本金を1億円まで再び減資する方針を固めた。同社は昨年に資本金をそれまでの90億円から1億円に減らしており、引き続き資本金1億円以下の企業を対象とする税優遇を受けることが狙いだ。コロナ禍による経営難を受けて、多くの大企業が中小化を目的とした減資を行っているが、企業規模にそぐわない税優遇を利用しているケースが多いとして、国は中小税制の見直しを検討している。
 スカイマークは8月26日、株主割当増資で20億円、日本政策投資銀行から劣後ローンを借り入れて20億円を調達することを決議した。コロナ禍で旅客数の低迷が続くなか、資金繰りの改善を狙う。同時に、調達した資本金を資産の他の項目に振り分けて、資本金を1億円に減資することも決めた。まさになりふり構わぬ中小化だ。
 コロナ禍での大企業の中小化は約1000社に上る。そのなかには旅行大手のJTBや毎日新聞社、「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイト、居酒屋「はなの舞」を展開するチムニーなど、有名企業が名を連ねる。
 かつて資本金は会社の格を示すものだったが、ここにきて有名企業がこぞって減資を行うのは、そうした「名」よりも、法人税の軽減税率を代表とする様々な税優遇という「実」を取る考えが広がっているからだ。また多くの企業が中小化を行うことで、今なら目立ちにくいというのも理由だろう。
 法人税法では資本金1億円以下を中小法人、1億円超を大企業と判定し、中小法人には年800万円の所得に対する法人税率の軽減、欠損金全額の繰越控除、法人事業税の外形標準課税の免除など多くの税優遇を認めている。そのほかにも設備投資などに対する減税措置も中小企業であれば上乗せ優遇されることがあり、多くの大企業が対象となりたがるのは理解できる話だ。
 しかし中小税制の存在意義はいうまでもなく、「地域の経済と雇用を支えている中小企業を応援する」(中小企業庁のパンフレット)だ。その前提には、大企業に比べて圧倒的に財務基盤がぜい弱であるという客観的事実があるのは言うまでもない。それを経営体力のある大企業が資本金の額面だけを減らして利用しようというのは、いわば“偽装”とすら言われても仕方がない。
 こうした状況を受けて、政府は多くの税メリットが中小企業の成長をはばむ要因になっているとして、中小税制の対象の絞り込みを検討している。だが大企業の“偽装”を防止するのはよいとしても、対象の厳格化が本来支援すべき中小企業をも苦しめることとならないよう、慎重な検討が望まれるところだ。