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路線価の発表は相続税にどう影響する?  路線価イコール評価額ではない
   毎年7月になると相続税路線価が公表される。相続税路線価はその名前の通り、一定の範囲内の道路(路線)に面した土地を評価するものだ。国土交通省が毎年3月に発表する「公示地価」の8割程度の価額が目安とされ、今年1月1日から12月31日までの間に相続や贈与で受け取った土地に、今回発表された路線価を基にした税額が適用される。相続税路線価の上昇は、土地所有者の税負担増を意味しているとも言える。
 もっとも相続税路線価は相続税の税額計算に使われるが、路線価がそのまま価額となるわけではない。同じ道路沿いにある同じ面積の土地でも、その形状や利便性は場所によって異なるからだ。具体的に路線価から評価額を計算するときには、「奥行」と「間口」に応じて補正率をかけ合わせることになる。奥行が極端に短かったり、間口が狭すぎたりするケースでは土地の使い勝手が悪いとして評価額が減額される。他にも土地が台形であるケースや傾斜地であるケースでも、減額補正がされることになる。逆にプラスの補正がかかるのは、角地や2つの道路に挟まれている土地で、これらの土地は利便性が高いと判断され、評価額も高くなる。ただしこうした補正を適用できるか否かは評価者によって判断の分かれるところで、国税当局と納税者の間でも争いになりやすいポイントだ。減額されると思い込んで相続対策を怠ると痛い目をみる可能性もあるので気を付けたい。
 路線価が表すのは、あくまで土地の値段であり、その上に何が建っているかはまったく関係ない。この仕組みを利用した相続税対策の一つに、いわゆる「タワマン節税」がある。マンションを評価する際にも相続税路線価が使われるが、そこに階層の違いはなく、評価額は1階でも30階でも同一となる。しかし実際には眺望がよい高層階ほど高い値段が付く。そこで相続前に高価格の高層階を購入しておき、1階と同負担の相続税を支払った上で売却して差額を得るという方法だ。もっともタワマン節税に対しては国税当局が厳しく目を光らせていて、あまりにも実売価格と評価額に大きな開きがあるケースに対して、「著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という個別規定、いわゆる「総則6項」を使って厳しく取り締まっている。タワマン節税を考えている人は、こうした否認リスクまで考慮した上で、活用を検討すべきだろう。