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パタゴニア創業者の自社株寄贈  社会貢献か相続対策か
  米アウトドア用品大手メーカーのパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード氏が、自身の会社の所有権を手離し、環境保全活動を行う非営利団体に寄贈することを発表した。同氏は「地球を守るために活動する人々に最大限の資金を提供する」と目的を語るが、非営利団体への寄付によって同氏は数千億円に上る相続税や譲渡所得税を免れることから、「超富裕層の相続税対策に過ぎない」との指摘も受けている。
 シュイナード氏が発表したのは、評価額約30億ドル(約4300億円)といわれるパタゴニア社の株について、創業者一族の価値観を守るために設立した信託機関に2%を寄贈し、残る98%については新たに設立する環境保全団体にすべて無償で渡すというものだ。さらに新団体には、今後パタゴニア社が生み出す収益から年間150億円弱を配分する。今回の寄贈により、同氏は約25億円の贈与税を納めるとされている。
 同氏は今回の決定について、「少数の富裕層と、多くの貧困層という分断された社会構造を改革する『新しい資本主義』に影響を与えるだろう」と強調する。全株式のうち98%の寄贈を受けた非営利団体は、寄付金控除などを受けられない。その代わり法人税が非課税となり、無制限で政治家や政治団体に献金を行うことが可能となる。つまり今回の寄贈により、非課税で年間1億ドルを環境保全支援に充てることが可能となるわけだ。同氏や創業家一族はかねてより熱心な環境保全活動の庇護者として知られており、贈与税を納めてでも社会貢献を選んだとの見方ができる。
 だが一方で、シュイナード氏は自社株の処理方法について、第三者への売却も検討していたと報じられている。もし売却が成立していた場合、同氏が納めるべき譲渡所得税は1千億円を超えていた可能性もある。また自社株が子孫に相続されていたら、その相続税負担は数千億円にも上ったとみられ、今回の自社株寄贈によって同氏はそれらの税負担を免れることとなった。結果だけみれば、同氏や創業者一族はパタゴニア社への実質的な経営権を維持しながら、相続税対策も実行したともいえるだろう。