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マイナンバー制度  「利用3分野」縛り撤廃へ
   政府はマイナンバーの利用拡大に向けて、給付金支給などに活用しやすくなるよう法改正する方向で調整に入った。マイナンバーの利用範囲も拡大し、国家資格の登録や引っ越し時の自動車変更登録などにも利用できるようにする。税・社会保障・災害対策の3分野に限定して利用するとして導入されたマイナンバー制度が、大きな転換点を迎えようとしている。
 2020年に新型コロナウイルス流行に伴う経済対策として実施された1人10万円の「特別定額給付金」では、給付事務の遅さが批判を呼んだ。その際にマイナンバーを活用していれば迅速な給付が実現できたはずとの声が高まったことから、21年に政府がまとめた「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、マイナンバー制度を社会基盤に据えるべく取り組みを進めるとして、税・社会保障・災害対策の3分野に限定していた利用範囲を改めて「国民の理解が得られたものについて、23年に法改正を含む必要な法案提出」と盛り込んだ。
 そこで現在検討されている改正法案では、税と社会保障、災害対策の3分野に限定してきたマイナンバーの利用条件を撤廃する。引っ越しの際に必要な自動車変更登録の手続きをオンラインで完結できるようにし、教員や行政書士といった各種資格の登録や変更手続きに際しての添付書類の提出を省略できるようにする。国家資格や在留資格の手続きでも行政機関などからの書類取得を省力化する。
 また給付金支給などに迅速に活用できるよう手続きを簡素にする内容も盛り込んだ。これまではマイナンバーに紐付けられた情報を利用する制度を設けるたびに法改正をする必要があったが、法改正を待てば支援に時間がかかるとして、法改正ではなく政省令で対処できるよう改めるという。
 年金や児童手当を振り込む公金受取口座について、マイナンバーを利用して普及促進する特例制度も創設する。行政機関がすでに口座情報を保有しているときに、公金受取口座として登録するかどうか本人に確認し、一定期間に不同意の回答がなければ同意と見なす。ただし不同意がないことをもって同意と見なす仕組みについては慎重な意見も多く、今後の調整は難航しそうだ。
 そのほか、海外に住む日本人がマイナンバーカードを日本の在外公館で交付・更新できるようにしたり、ローマ字の氏名や西暦での生年月日をカードに追記して身分証として海外で利用しやすくしたりする見直しも盛り込んだ。政府は1月23日に召集される通常国会に出す改正案に盛り込み、成立を目指す方針だ。
 マイナンバーカードの申請件数は1月4日時点で約8300万枚に達し、運転免許証の保有件数を超えた。ただし申請件数の増加はポイント還元などのキャンペーンによるところが大きく、利便性の向上が理由ではないとの声も多い。政府は法改正でマイナンバー制度の社会基盤化を加速させていく狙いだが、重大な個人情報を扱うため利用範囲を厳しく制限してきた従来のルールを撤廃することで、情報漏えいリスクが拡大する懸念は否定できない。