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贈与に必要な「あげましょう」「もらいます」  調査を受ければ約9割に申告漏れ
  「ところで奥様、過去に働かれていたことはありますか」「いえ、ずっと専業主婦です」「おかしいですねえ、どうしてこんなに預金に残高があるんでしょうか。これは亡くなったご主人の収入ですね。贈与の証拠がなければ、相続税の対象となってしまいますが…」
 非常によくある、相続税の税務調査でのやり取りだ。亡くなった夫としては生前に妻に財産を渡したつもりだったかもしれないが、それを妻が証明できなければ贈与は成立せず、相続財産として相続税を課されてしまう。
 贈与の大原則は、「ただであげましょう」「ただでもらいます」という双方の合意と認識があることだ。例えば孫名義の通帳を管理していて自分名義の通帳から移し替えるだけで贈与をしたつもりになっているケースがあるが、もらった側が知らないで贈与が成立することはない。贈与をするなら、きちんと相手に伝えること、もらった人に財産が実際に渡って、もらった人自身によって管理されているという事実が重要となる。合意は書面でしなくても、口頭でもかまわない。しかし税務調査の場面で証明できる自信がないなら、契約書などの書面にして自署押印しておくと非常に心強いだろう。
 また、モノの実際の引き渡しなくして贈与は成立しない。現金や預金なら、あげる人の通帳からもらう人の管理する通帳へきちんと振り込まれていることが贈与の証明となる。不動産を贈与するなら、登記などの名義変更手続きを絶対に忘れてはならない。
 また年間110万円以内の贈与は非課税だが、「毎年110万円を10年にわたって贈与する」というような契約は、それ自体が一つの贈与契約である「連年贈与」と認定され、贈与税を課されかねない。この連年贈与対策として、毎年111万円を贈与して申告しておけば税務署に否認されることはないとの“裏ワザ”がまことしやかに語られることがあるが、会計事務所を対象としたアンケート調査によれば大半の税理士が「意味がない」と答えている。